類似画像検索ツールの試作とヒット率の向上
加藤 由佳
仲澤 宏樹 彦坂 祐次
1.はじめに
近年,人間の知的な活動である非言語的なコミュニケーション(感情や感性の伝達)が見直され,社会全体が感性という側面を重視する傾向にある.さらにインターネットの急速な普及により,画像や音声情報をデジタルデータとして容易に取り扱えるようになった.しかし,膨大な情報量を含む画像,音声情報を蓄積,管理,検索するシステムで実用的なものは少ない.
本研究では,ファイル名やカテゴリ名などの名前やキーワードに頼らずに,検索対象の画像を探し出すシステムであるイメージサーチャを研究基盤として取り上げ,ユーザが検索イメージを容易に指定しやすくする方法とヒット率の向上を目指す検索方法の2点からイメージサーチャの改善を試みる.
2. 概要
本研究はイメージサーチャの検索方法と操作性の2つを改善するため,次の2点からアプローチする.
(1)画像の簡略化を行い処理速度の向上.
(2)検索イメージ提示の容易性.
3.研究内容
3.1
実施項目
(1)イメージサーチャの調査
現在のイメージサーチャは,ユーザが検索したいイメージを詳細かつダイレクトに表現しきれていない.例えば以下のような点がある.
@検索方法の一つであるNine Colorは,9つの分布を指定するだけではユーザの詳細なイメージを表現できない.
Aイメージサーチャは,幾つかの検索方法を複合させ検索を行う事が出来る.しかしそれによってヒット率が必ずしも向上するわけではない.
Bイメージサーチャで最も多く使用されるであろう機能Free Handの描画ツールが少ないため,ユーザのイメージを十分に表現できない.
(2)拡張機能の試作
画像を二値化し実像を取り出す.m×nに区切り,モザイク画に変換し画像情報を簡略化する.これにより簡略化した画像データ同士で照合が行える.図1は試作した検索ツールのインタフェースである.
3.2
試作システムで生じた問題点
試作システム作成時,次のような問題が発生した.
@ 2値化の性格上,実像は明度が低い場所と判断されがちで人間の認識と異なる.
A 人間が識別可能でいて,かつ処理時間に影響を及ぼさないようm×nグリッドを設定するか.
Bキャンバス内で線を描く場合速くカーソルを動かすとキチンとした線が描けない.
3.3
解決策
上記の問題を解決するため以下の解決策を取った.
@2値化に関しては平均明度を設定した.
Am×nグリッドは調査,検討の結果3×3グリッドが最適と判断した.
4.評価及び考察
被験者を立て両システムを用い,4種類の画像を検索した.
試作システムはユーザがイメージした実像のみを検索するので,記号や図形などに向上が見られた.
5.今後の課題
(1)カラー表現を可能にする.
(2)イメージをオブジェクトとして扱い,大きさ,位置に関係なく検索が行えるようにする.
(3)システムを人間の認識方法や感性表現に近づける.
参考文献
[1]情報処理振興事業協会(IPA)技術センターによる「日常生活における創造的活動支援マルチメディアシステムの研究開発」eMMaプロジェクト
[2]一松 信,村岡 洋一:感性と情報処理pp1-26