エージェント指向インタプリタによる
オークションシステムの試作・評価
秋山
正二郎 鳥浜
健太 矢野
康博
ネットワークを中心とした分散環境においてエージェントが協調動作するには、他のエージェントの活動を監視し、情報を取得する能動的な機構が必要である。
現在のオブジェクト指向開発環境は、メッセージの着信によるイベント駆動であり、このような機構を持ち合わせていない。また、エージェント指向環境では、能動的に外部環境を監視する能動的機構の概念はあるが実用には至っていない。
本研究では、その機構を実現する方法として、状態変化を監視する条件式を送り込み、条件式を満たす変化が生じたときに、その変化を送信元に通知する機能を持ったインタプリタ言語を仮想マシン環境と合わせて試作し、その有用性を評価した。
2.研究内容
(1)インタプリタの開発
能動的な監視・通知機構を実現するためにインタプリタは下記の機能持つ。
@
コンパイルし作成したバイトコードを実行する機能
Aバイトコードを送信先の仮想マシンで解釈・実行する機能
この機能により、監視条件式を送り込めるようになる。監視条件式は、状態変化を複合的に判断するものであり、この判断ルール自体を送り込むことにより、送信先の状態監視のためのポーリングは不要になる。
(2)事例アプリケーションへの適応
条件監視が有効なシステムとして、オークションシステムがある。オークションシステムにおけるビッダーエージェント(入札者代理人)は、常に価格の変動を監視する機能が必要である。そこで、インタプリタの有用性を評価するため、簡易オークションシステムを試作する。また、インタプリタには、試作オークションシステムに特化した命令を追加する。
オークション試作システムは、ビッダーエージェント,オークショニアー(主催者・司会者)システムから構成され、入札・落札などのメッセージ交換にはIRCを利用したオープン・オークション形式を採用する。
3.評価、および結果
試作インタプリタを用い、ビッダーエージェントの動作を記述し、オークションに参加させることで、能動的に状態の監視する機構と監視条件が成立した時に、送信元に結果を通知する機構を実現できるかを評価した。その結果、以下の結論を得た。
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入札条件(監視条件)を送り込むことにより、入札を自動的に行うことができる。
A
入札の結果を自律的に通知させることができる。
4.まとめ
本研究では、小規模ではあるが、状態変化を監視する条件式を送り込み、条件式を満たす変化が生じたとき、送信元に通知する機能を試作インタプリタで実現することができた。
今後の課題として、インタプリタの機能拡張が挙げられる。インタプリタ機能の拡張により、複雑な指示にも対応できるようになり、株式売買など複雑な条件を要するシステムに応用することができると考えられる。
参考文献
[1]
大木幹雄:協調動作機構の実体関連分析プロセスへの適用
情報処理学会 ソフトウェア工学研究会
オブジェクト指向シンポジウム’99 99巻9号pp.127-136,1999年
[2]
本位田真一,飯島正,大須賀昭彦:ソフトウェアテクノロジーシリーズ3
エージェント技術,1999,共立出版