彩の国連携力育成プロジェクト [サイピー]

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「地域でつながる・地域でつなぐ~地域包括ケアの担い手を育てよう!」(2015.12.5開催)

平成27年12月5日(土)、講演会&ワークショップ「地域でつながる・地域でつなぐ~地域包括ケアの担い手を育てよう!~」をウエスタ川越にて開催いたしました。第1部の講演会には87名、第2部のワークショップには58名の、大学の教職員の他、保健医療福祉関係者や一般県民の方にご参加いただきました。

 第1部 講演会

 第1部講演会は「地域包括ケアシステム構築の取り組み 幸手市モデルより」というテーマで、地域連携パスと住民主導による自助・互助を格とした地域包括ケアシステム体制の構築を図っている幸手モデルについて、実践に携わっておられる方々にお話しいただきました。

 まず、東埼玉総合病院の中野智紀先生から、ビデオレターという形で、地域包括ケアシステムとは何か、及び幸手市モデルの概要をお話しいただきました。曰く、「地域包括ケアの目標は、医療介護の一体的提供や地域との連携、多職種連携自体ではなく、住み慣れた地域で最後まで誰もが暮らし続けられることである。地域にこそ暮らしがあり地域包括ケアが対象とする問題があるのであり、地域の現状を知るところから始め、そのうえで専門職や住民がどのような協力体制を作るのかというふうに積み上げていくことが大切である。その積み上げていった結果できるものがその地域の地域包括ケアシステムだろう。幸手モデルはソーシャルワークシステムで、地域全体を緩やかに組織化しつながりを作っている。具体的には、『暮らしの保健室』、地域診断による地域課題の共有、『地域ケア会議』、『みんなのカンファ』など住民主体で地域課題に取り組んでいる」等々。すべてはご紹介できませんが、とても刺激的で目からウロコが落ちるようなお話であり、また幸手モデルの全体像を示していただきました。

 続いて、専門職という立場で地域にどのように関わるかという視点から、薬剤師の関谷陽子さんに、ご自身の取り組みについてお話しいただきました。関谷さんは、会社の管理薬剤師、幸手市薬剤師会副会長を務められながら、昨年からは幸手市幸せすぎてステーションのコアメンバーに加入されるなど、地域に密着した活動を行っていらっしゃいます。関谷さんのご講演により、豊富な写真やご自身が体験したエピソードを交えながらご自身の取り組みを紹介いただき、幸手でどのような活動が行われているのかという具体的なイメージを描くことができました。床の間のある和室での「暮らしの保健室」の様子など在宅医療連携拠点「菜のはな」の活動の紹介。高齢者のご自宅を訪問して見つけた大量の残薬から薬を説明するだけでは意味がないと感じられた体験。専門職の勉強会や薬局での検体測定や栄養相談などの地域活動。このような積極的な活動をされる根底には郷土愛があるという言葉が印象的でした。

 次に、「暮らしの中の地域包括ケア」、インフォーマルな資源をつなぐという立場から、NPO元気スタンド代表の小泉圭司さんにご講演いただきました。小泉さんは2007年12月に幸手団地に、押し付けない介護予防をコンセプトにしたコミュニティ喫茶「元気スタンド・ぷリズム」を開設、それ以降、様々な地域における取組をなさっておられます。小泉さんはまず参加者に「あなたが高齢になった時どんな生活をしたいですか?」という問いかけから講演を始められました。退職や子どもの独立など生活ステージの転換をきっかけとして、「やることがない→出かけない→食欲が出ない→交流がない→自分に気付かない」ということが要介護リスクを高めるという問題意識から、居場所づくりなどのコミュニティサポート、お弁当や総菜の販売や配食などの生活安心サポート、働く場所の提供や外出支援など生きがいサポートなど多彩な活動を行っておられます。この活動に際しては、押し付けない介護予防として自主的に楽しむ目的で行うことを重視しておられ、かつ小泉さんご自身も楽しそうに話されていました。

各講演の後及び第1部の後半には質疑応答の時間でしたが、会場の熱気も高まり、多くの質問があり、時間が足りないくらいでした。

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第2部ワークショップ

第2部ワークショップ「『地域でつながる・地域をつなぐ』人材のコンピテンシー」では、第1部で得たイメージやヒントを元に、「地域でつながる、地域をつなぐ人とは具体的にどのような人なのか」ということについて、参加者の皆さんと共に考えました。

 まず、各自が複数の人(チーム)で何かに取り組んだ経験について、2人ペアになってお互いにインタビューをし、それをグループ内で共有するというワークを行いました。地域でつながる・地域でつなぐというテーマに関心をもって参加してくださった方が多かったせいか、さまざまな地域や現場でのチーム活動の経験をお話しいただき、なかなか短時間では語り尽くせない様子が伺えました。

 次に、地域で活動する時にどんな人となら一緒に活動しやすいかを具体的な言動や態度として考えていただきました。この時、この彩の国連携力育成プロジェクトメンバーで半年ほどかけて議論してきた多職種連携に必要なコンピテンシーの枠組み(「ヒューマンケアマインド」、「専門性を志向する態度と行動」、「専門性を柔軟に発揮する力」、「コミュニケーション能力」、「チームを形成し行動する力」「自己とチームをリフレクションする力」)を元に議論していただき、出た意見を付箋に描きだしていただきました。

その後全員で付箋を見て回り、これは大事!と思うものにシールを貼っていきました。シールが多く集まった項目は次のようなものでした。

  • 相手の困難に気づく
  • その人に人生に関心を持つ
  • 相手の話を最後まで聞く。頷く、笑顔、表情豊かに
  • 自分にできることは何かを考えようとする
  • 常にまわりの情報を取り入れようとする
  • 誰にでもわかりやすいように伝える
  • 一人でなんでもやろうとしない
  • 失敗したことを隠さない
  • 振り返りしやすい雰囲気を作れる(和やかな)

 最後に、「地域でつながる・地域をつなぐ人に、自分がなる/周りの人を育てる/見つけるために、明日からできること」を考えていただき、グループで宣言していただきました。非常に熱心に真剣に話し合いをしていただき、あっという間の2時間で、まだまだ話したりないという様子が伺えました。

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参加者の方の感想を一部抜粋しましたので、ご参照ください。 

  • とても楽しく、自分のためになった日でした。
  • 心に残るキーワードがたくさんありました。”地球を守る”
  • 地域の方の声がもっと多くききたかった。
  • 地域の活動、想いを具体的に知る事ができました。地域とつながる病院づくりを考えていきたいと思います。
  • 地域包括ケアという言葉はよく耳にしていましたが、本当の意味で理解していなかったと痛感しました。改めて学びたいと思います。
  • 地域包括ケアの本質を教えて頂きました。地域を知る、職種は関係なく、人材、地域愛が重要です。
  • それぞれのスピーカーの方の熱い想いをきいて、企業の社会的責任CSRとは、もっと真摯に向き合っていて必要があると感じました。医療、介護の事務職の方に任せっきりにならず、もっと一般企業、自営業の方でも周知し、協力体制を地域全体で行っていかなければいけないなと思いました。本日はありがとうございました!!
  • 住民主体の地域包括ケアについて、具体的な事例の紹介を含めてお話いただき、感銘を受けた。
  • 関谷さんが最後にお話ししていた「地域を守りたいから」ということが印象的でした。自分もコミュニティに対する”愛着”が根本的な原動力になると考えて活動しています。
  • 関谷氏の専門職から住民に積極的にアプローチし、近接性を高められていることに感動しました。「待ち」の姿勢からは何も産れないことに気づかされます。小泉氏は「集える場」「座れる場」「話せる場」を街中に用意されており、すばらしいですね。その後の発展性にも期待できます。
  • 手間がかかること、時間がかかること、改めて実感しました。
  • ”地域愛”だけでどれだけたくさんのことが出来るのか、自分の(学生という)立場でどれだけのことが出来るのか考えてみたいと思います。
  • 「とねっと」については、非常に素晴らしいシステム(残薬、課題である医療費の上昇をいかに下げていくのか?)だと思いますので、もっと進められたら良いと思います。男性の社会参加の課題について、色々な角度から考える必要性を思いました。
  • ニュースやメディアで取り上げられることの多い地域包括ケアですが、自分が思っていた以上に魅力的かつ難しいということを感じました。地域住民が主体であるからこそ出来ること、可能性の選択肢がふえていくのだと思います。
  • 興味があり参加させていただきました。初参加なので話についていけない部分もありましたが、皆様の取組みの重要性に気づきました。自分の地域でできることを考えていきたいです。
  • とても興味深く、勉強になりました。グループディスカッションに不安を感じていましたが、とても穏やかな雰囲気で話が活発に行えました。修了証も嬉しかったです。
  • いろいろな職種の方が積極的にとりくんでおられて感動しました。
  • 第2部からの参加でしたが、とても楽しかったです。ワークショップの結果を参加者にフィードバックいただき、この時間内では気づけなかった(想起できなかった)項目等を付加する機会があると嬉しいです。
  • また参加したい!!とても勉強になりました。