埼玉医科大学の紹介
(1) 「真の連携力を地域で学ぶ」 埼玉医科大学 学長 別所正美
多領域の専門職を目指す学生が、地域の現場でともに学ぶという県立大学のIP演習は、「医学部学生が変わる」ということを私たちに実証しました。今回の4大学での取り組みの中で、県内唯一の医学部のある大学として、将来の埼玉県の地域医療を支える人材育成のための連携教育に取り組んで参ります。
(2) 大学の設立から現在までの教育
本学は1972年に社会福祉法人毛呂病院を母体として医学部医学科の単科大学として設立され毎年100人前後の医師を輩出してきました。その後、2006年に看護学科、健康医療科学科、医用生体工学科の3学科からなる保健医療学部を、翌年には、保健医療学部に理学療法学科を設置し、医療系総合大学となりました。医学部は優れた臨床実地医家の育成をめざし教育を行ってきました。本学は、医学部のある毛呂山キャンパスに大学病院、保健医療学部のある日高キャンパスには国際医療センター、そして、埼玉県西部の中核都市である川越に総合医療センターの3つの病院を持ち、それぞれが高度な専門診療を提供するとともに、地域に根付いた病院として、埼玉県西部の救急、周産期医療をはじめとする地域医療から、がん、心臓に関する高度先進医療までを提供しています。
医学部、保健医療学部の学生は、それぞれ特徴を持った3病院での実習を経て国家試験に合格し、各専門職として働いています。医学部では、6年一貫の臓器別のカリキュラムで人の正常構造・機能、人の病気を学ぶとともに、1年から4年生まで、良医への道コースで、医師として最も必要な能力である臨床推論能力を養い、5年生以降の臨床実習に向けた臨床技能の習得を目指した実習や介護・福祉施設での実習、態度教育としても重要なコミュニケーション実習などを行っています。
(3) 埼玉県立大学との大学間連携の経緯と4大学連携についての期待
埼玉県立大学のIP演習には、平成21年度に県立大学が4年生において全学科必修で実施するようになった時から参加させていただき、自ら希望した医学部4年生が毎年20名~30名参加してきました。複数の専門職を目指す同年代の学生が保健医療福祉の現場でともに学ぶこのIP演習は、どうしても病気に関する知識の習得に偏りがちな医学部4年生に対して、患者やご家族、関わる専門職の思いや願いを大切にし、患者中心の医療とは何か、医師としてどのように関わるのかを考える貴重な機会となっています。
今回、埼玉県立大学と埼玉医科大学の連携がさらに発展した形で、薬学、栄養、建築という新たな専門が加わり、チーム活動にさらに多様な価値観が作用することが期待されます。これらが、大学の垣根を越え、埼玉県という地域をベースにしたまとまりとして連携していくことの埼玉県の地域医療に対する効果は計り知れないものがあります。今後来たるべき超高齢社会で、医師は何をすべきか、どう専門職として働いていくのかを考える絶好の機会となるのではないかと期待しています。本学では、平成22年度より埼玉県地域枠奨学金を受給する学生が学んでいますが、現在本学のミッションである ” Your Happiness is Our Happiness ” を学生時代に体感し、実践できることを目指して学び続ける専門職が、将来地域医療に貢献することを期待しています。