埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉学科 講師 新井利民
本取り組みの背景と目的
この取り組みを開始することになった背景は、埼玉県が高齢者人口の増加率が全国一位、高齢者単独世帯の増加率が全国一位という状況にあるからです。高齢者の分野だけではなく、その他にもさまざまな問題があるわけですが、そういった問題に対応するために、地域住民の質の高い暮らしの実現を基本理念とすることにしました。それを4大学の連携、彩の国大学連携を通じ多職種の連携によって課題を発見し、解決できる連携力のある人材育成を行うということを大きな目的として進めています。
具体的には、4,5年かけて専門職の能力の育成とその育成の方法の構築に取り組んでいきます。それぞれの大学では、専門家、専門職を養成しており、さらに4大学での学びを今後いかに構築していくかが課題となります。
目標の一つ目は、多職種を理解する力を養うこと、二つ目は大学連携による教育システムの構築、学際的共同研究の実施です。
彩の国大学連携科目
実際に授業などを通じて、学生同士が関わり合うことで、どういうことを学んでいるのか、どういった職種なのかということを理解する力を養っていくことで問題課題解決を連携して行う力を養っていこうと考えています。
この理論的・教育実践的背景には、複数の領域の専門職者が連携およびケアの質を改善するために、同じ場所で共に学び、お互いから学び合いながら、お互いのことを学ぶという、専門職連携教育に関するCAIPEの定義があります。その定義や方法論、考え方を基盤として進めていくということになります。具体的に科目をそれぞれの大学と共有できないかと考えており、最後には共同開講ができればと考えています。
平成24年度試行事業で、2月27日にIPW(Interprofessional Work)実習(試行)を行いました。4大学の学生25名に参加してもらい、オリエンテーションを半日挟んだ後、4つの病院や福祉施設で1日実習をしました。短い期間でなおかついままで会ったこともない学生同士でしたが、オリエンテーションやウェブで交流する機会を作ったことで、活発なディスカッションができたと思います。今回、薬学部の学生、建築学部の学生が入ることで、学びの様子が今までと随分違っていました。
教育システムの構築
◆学生の主体的な共同学習機会の奨励・支援
単に授業科目だけではなく、学生の自主的な学びの発動に何らかのかたちで支援していきたいと思っています。すでに埼玉県内インカレで学習するようなサークルもあると聞いているので、4大学が一体となって支援をしていければと思っています。
◆広報活動
ウェブサイトを立ち上げました。コンテンツはまだ少ないものの、今後行っていく事業について適宜報告をしていきたいと思っています。ウェブサイトと共にツイッターのアカウントを取り、すでに試行的につぶやきをしています。今後、こういった情報システムを活用しながら、広報ないしはいろいろな方々から、意見をもらえるような仕組みにしていきたいと思っています。
◆教職員研修
長崎大学を中心とした取り組みや、徳島文理大学香川薬学部を中心とした取り組みの視察をしました。先週、イギリスのIPE(interprofessional education:専門職連携教育)の実態について、視察、ないしは調査をしてきました。
取り組みの実施・評価体制
彩の国大学連携学長会議を定期的に開催し、学長の連携によって事業がスムーズに進むようにしていくことになります。大学連携推進会議は毎月開催しています。また平成26年度に埼玉県の担当部局やそれぞれの専門職団体で評価委員会を組織し、評価してもらいます。