彩の国連携力育成プロジェクト [サイピー]

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チーム医療に不可欠な「対等な関係性」を学ぶ機会に

埼玉医科大学総合医療センター

薬剤部 係長 市場仁子 さん

同じ薬剤師でも職場によって環境は大きく異なる

ichiba1 埼玉医科大学総合医療センターは、内科を始めとする25の診療科からなる総合病院です。外来患者数は1日に約2000人で、ベッド数は916床(平成25年3月現在)。また、高度救急センターの指定と共にドクターヘリ基地病院の指定も受けており、地域の基幹病院としての役割を果たしています。
 私が現在所属しているのは薬剤部の調剤室です。当病院では注射調剤は別の部署が担当しているので、調剤室での業務は本当に名前通りの計数調剤や計量調剤がメインですね。薬学部の学生にとっては最も想像がつきやすい業務だと思います。
 当病院では外来の患者さんについては院外処方を進めているので(現在の院外発行率は約87%)、調剤室が担当するのは、院内発行される一日130~150枚程度の処方箋と、あとは入院患者さんのための一日400枚程度のものになります。
 ただ、入院患者さんについては、病棟に担当薬剤師がいます。病棟担当は入院患者さんに対する処方の最終チェックと共に、入院処方の調剤を私たちと一緒に行っています。
 私も以前は長い間、病棟担当をしていました。調剤室では薬剤の調剤(医薬品の取り揃え)と処方箋の鑑査が主な仕事なので、部署以外の人間とは接触する機会がほとんどありませんが、病棟に出ると患者さんの情報を現場で見ながら、一人一人の薬歴もつけて、ということを行いますので、働く環境としては全然違うものになります。

総合病院におけるチーム医療での薬剤師の役割とは

 さらに病棟では、糖尿病、緩和医療、栄養サポート、褥瘡対策、感染対策など、さまざまな分野でチームによる医療が行われているので、薬剤師はそこにも参加することになります。
 私は2001年に糖尿病療養指導士の資格を取得したこともあり、糖尿病チームの土台作りの段階から関わっています。チームのメンバーは、医師、看護師、理学療法士、栄養士、検査技師、そして薬剤師、という多様な職種です。それぞれ専門性の異なるメンバーが、糖尿病の患者さんをケアする、という共通認識のもとで連携する、ということが基本になります。
 連携における薬剤師の役割としては、まず基本中の基本として「薬をきちんと飲んでいるか」「副作用が出ていないか」という確認を行います。また、例えば栄養士から患者さんの食べ物の嗜好を聞いて薬物との相互作用についての検証もしますし、運動療法を行っているのであれば運動時の低血糖の出現の有無の確認や、βブロッカーを投薬することによる低血糖症状のマスクを予め理学療法士に伝えておくということもあります。他にも、検査技師に検査データを確認してもらって、私たちの取り組みが本当に正しいのかどうか、という検証をお願いすることもあります。
それから、医師には言い出せないけど私たちコ・メディカルには言える、ということは患者さんにはよくあることなので、そうした思いをチーム全員で汲み取ってフィードバックする、ということもありますね。

「分からない」とはっきり言えるかどうか

 チームがうまく機能するためには、全てのメンバーが対等な存在として関わる、ということが大事です。それから、分からないことがある場合に「分からない」とはっきり言えるかどうか。
そういう関わり方ができるようになるには、ある程度自分に自信がないと難しいので、新人がいきなりチームに参加するのは厳しいものがあります。私も、最初の頃はずいぶん苦労しました。
 これからの時代は、こうした連携が大病院に限定されたものではなくなります。私もワークショップの開催などに関わっていますが、地域全体で糖尿病の患者さんを支えていきましょう、という動きが既に始まっています。
 当病院の役割が急性期の患者さんを助けることだとすると、地域のクリニックや薬局はその後のフォローをするわけですから、お互いの取り組みをそれぞれ把握しておくことには大きな意味があります。どのような職場で働くにしろ、これからの薬剤師には多職種連携の素養が当然のように求められることになるのではないでしょうか。

チーム医療では「みんなが対等」を念頭に

ichiba2それにしても、最近の学生はとても恵まれた環境にいますね。自分たちの学生時代にもこういうプログラムがあれば、私ももう少し早く成長できたかもしれない、と思います(笑)。