春日部市立病院 地域医療連携室
ソーシャルワーカー
宇田川真季子 さん
急性期病院での退院支援という役割
春日部市立病院は17の診療科をもつ総合病院です。ソーシャルワーカーである私の主な業務は、急性期病院である当院で入院治療をされた方の退院支援です。
患者さんご本人とご家族との話し合いの中で、入院前の生活などもお伺いしながら、退院後に自宅で安心して安全に過ごせるように、社会資源で活用できるものがあればご提案をして、またそれを担う部署におつなぎして、という支援を行っています。
独居の高齢者の方など、介護が必要な状況のままでは自宅に戻れないという場合であれば、療養型の病院や施設のご紹介もしています。
私たちがそうしたご提案をするにあたっては、院内の医師、看護師、リハビリテーションスタッフとの連携が不可欠ですし、ご自宅に戻る際に介護保険を活用するのであれば地域のケアマネジャーさんに情報提供もします。患者さんを中心として、さまざまな方面に橋渡しをする、というのが私たちの役割ですね。
また、退院支援だけでなく、医療費に関する相談対応も大切な役割です。中には、「お金がないので、抗がん剤治療は受けません」という患者さんへの対応を看護師などから依頼されるケースもあります。それが本当にご本人の意志なのか、それとも医療制度などの情報をご存知でないためにそう思われているのか、ということについてもよく話し合いをして、活用できる制度があるのであれば活用して何とか治療できる方向につなげていく、というのが基本的な姿勢になります。
自分だけの判断では、包括的な支援にならない
急性期病院では、入院から退院までの時間はどうしても限られたものになります。ですから私たちは、「この方を誰につなげれば必要な支援が受けられるのか」ということを瞬時に判断しなければなりません。上司や仲間にアドバイスをもらうことも当然ありますが、適切な判断のためには予め幅広い連携先を自分が知っている必要があります。
どれだけ有用な情報とコンタクトできる連携先を知っていて、なおかつ、いかに一人一人の患者さんが必要とする先につなぐことができるか。ソーシャルワーカーの役割は、それに尽きるのではないでしょうか。
また、だからこそ「独りよがりにならないように」ということをいつも強く意識するようにしています。患者さんやご家族とのお話を私の中だけで完結させてしまうと、不十分な支援しかできなくなってしまいます。それでは私というフィルターを通した支援しか得られなくなってしまって、多職種とのつながりが切れてしまうからです。患者さんを応援するのが私だけでは、包括的な支援は行えません。
ただ新人の頃は、「患者さんに聞かれたことに対しては即答しなければ不安を与えてしまう」、「私が全ての連携元になってサポートをしなければならない」と思い込んでいたところがありました。それが間違いだと気付けるようになったのは働き出してから数年が経ってからだったと思います。
高齢化が進む今後は、退院支援がより重要なものに
退院支援の具体的な流れとしては、まず患者さんを一番近くで把握している看護師から、「この方には支援が必要です」という依頼が私たちに入り、それを受けて私たちが介入する、というのが一般的です。
例えば末期がんの方で、ご本人もご家族も自宅での療養を望んでいるけれども、食事がとれないので自宅で点滴をする必要がある、というケースがあったとします。
その場合にはやはり、点滴の管理をどうするのか、ということが大きな問題点になります。その場合、看護師などの医療専門職と連携し、点滴管理とはどのようなものなのか、気をつけなければいけないのはどういう点か、そしてそれがご家族に管理できるのかどうか、といったことを相談します。
その結果として、ご家族だけでは管理が厳しいのであれば、介護保険あるいは医療保険での訪問看護をご提案しますし、また、お身体の状況から介護ベッドをレンタルする必要があるのであれば、その紹介も行います。
医療が必要な状態で自宅に戻られるケースでは、患者さんやご家族が少しでも安心できるように、さまざまな職種との連携が不可欠です。院内での十分なカンファレンスを行うだけでなく、地域で支援に携わる方々にも、私からも医療職からも情報を提供して、スムーズかつ安全に自宅での医療が継続できるようにする必要があります。
これからの日本では、特に埼玉県では、高齢化がこれまで以上のスピードで進んでいきますから、すべての患者さんに完結医療を入院中に全て行うことは難しくなります。入院はごく短期間で、あとは医療を続けたまま自宅に戻るというケースが増えるでしょうから、そうなったときにソーシャルワーカーとしてどのような支援ができるのか、ということをもっと考えていかなければ、と思います。