彩の国連携力育成プロジェクト [サイピー]

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IPW実習で「現場」と「異なる視点」を知った

日本工業大学 生活環境デザイン学科

2年(2013年2月時)
村上光明 さん

 「自分もその中に身を投じてみたい」

murakami1 僕は2月に行われた第1回の4大学連携IPW実習に参加しました。実習内容を簡単に説明すると、大学も専門分野も異なる学生たちがチームになって福祉施設を訪問し、利用者である1人の高齢者の方と、施設担当者から話を聞いて、チームでその方の課題解決を考える、というものでした。
 実は以前に、ユニバーサルデザインに関する授業の一環として、埼玉県立大学でのIP演習の報告会を見学したことがあるのですが、そのときに「これはすごい」という強い印象を受けました。今回はさらに4つの大学の学生が集まるということで、これまでにない新しい取り組みですし、自分もその中に身を投じてみたい、と思ったのが参加の動機です。
 それから、僕は建築を学んでいるのですが、今年の後期に福祉空間を設計する課題を経験して、福祉ならではの「人の役に立つ空間」という視点で設計を考えることに面白さを感じたことも理由の一です。
 ただ建築の学生ですから、医療や福祉のことはあまり分かりません。そういう状態で福祉施設に足を踏み入れるのはとても不安でしたし、緊張もしたのですが、同じチームになったみんなが気を使ってくれて、すごくありがたかったです。

分野の壁を超えられたオリエンテーション

 IPW実習のスケジュールとしては、まず施設での実習の一週間前に、今回のIPW実習に参加する25人の学生が集まってオリエンテーションが実施されました。そこで6~7人ずつのチームに分かれて、お互いの自己紹介と実習に向けた話し合いを行いました。
 僕のチームのメンバーは、埼玉県立大学から看護学、社会福祉学、検査技術科学の3人、埼玉医科大学の医学から1人、城西大学の医療栄養学から1人の計6人。僕と検査技術の学生が2年生、他はみんな3年生という構成でした。
 オリエンテーションでは、まず冒頭にチームワークを養うためのレクリエーションがありました。折り紙で作る輪を制限時間内にどれだけ多くつなげられるか、ということをチーム対抗で競争したのですが、これがかなり盛り上がって(笑)。その段階でチームのみんなと仲良くなれたので、その後の流れにも楽に入ることができました。
 実習に向けたチームでの話し合いでは、利用者さんの症状や身体の状況などの情報を基に、当日どういう質問をするか、ということを議論しました。ただ、周りはみんな医療系なので普通に話をしているのですが、僕にはわからないことが多くて。「この病気はどういう病気ですか」とか「この薬はどういう効果があるんですか」とか、多分チームのみんなにとっては基礎的な質問をたくさんしたと思うのですが、丁寧に説明してくれて嬉しかったですね。
 オリエンテーション後は実習当日までチームで集まることはありません。その代わりに、WebClassという、Web上でメンバーとやり取りできるシステムが使えたので、ここでも僕は色んな質問をみんなにしました。

同じ「段差」でも、専門性によって見方が変わる

 実習当日は午前中に、6人チームが2人ずつの3組に分かれて、それぞれが1時間ずつ利用者さんに話を聞く、というインタビューを行いました。
 僕は福祉施設に足を踏み入れることも初めての状態でしたが、他のメンバーはすでに施設実習などを経験しているので、本当に「慣れている」という印象でした。ペアを組んだ看護学科の人に助けてもらいながら、話に付いて行くので必死、という感じでしたね。
 ただ、利用者さんがとても気さくに話してくださったので、事前に考えていた質問内容もある程度は聞くことができました。
 午後からは、ファシリテーターでもある施設担当者の原嶋さんから、午前中にインタビューした利用者さんの状況を伺った後に、いよいよ本題の「課題解決を考える」グループディスカッションに入ります。利用者さんがより良い生活を送るためにはどうすればいいのか、最終目標である自宅での一人暮らしを再開するためには何が必要なのか、ということをみんなで話し合いました。
 僕からは、そもそも利用者さんは自宅で転倒したことがきっかけで施設に入ることになったということだったので、その点について建築分野の視点から解決策を考えました。インタビューの結果、普段は玄関ではなく縁側から家に出入りしているということも分かったので、そこの危険性をどうすれば避けられるか、どうやって「段差」を解消すればいいか、ということを話しました。
 グループディスカッションでとても面白く感じたのは、同じ「段差」を考えるにしても、建築系の僕と医療系のメンバーとでは発想が全く違うということです。僕はつまづかない段差を作るとか、そもそも段差をなくすとか、「段差そのものをどうにかする」という発想になるのですが、医療系のメンバーは「段差でつまづかないための動作はどうすれば身につくか」という発想になるんですね。その視点の違いはとても勉強になりました。

現場を知り、利用者像がイメージできるように

murakami2 実習を終えて感じたのは、現場を実際に見ることがいかに大切か、ということでした。午前中のインタビューでは付いて行くのに必死だった僕が、午後のグループディスカッションにはある程度参加できたのも、実際に当事者とお話をしたことで状況を具体的にイメージできるようになったからだと思います。
 建築系の授業では、「夫婦と子ども2人の住宅を設計しなさい」といった条件で設計課題に取り組むのですが、これまでの僕はその利用者像が見えていなかったというか、独りよがりなイメージしかできていなかった気がするんですね。
 でも今回の実習を通じて、直接話を聞かなければわからないことが山ほどある、ということに気付けたので、これからの設計では利用者に対する想像力というか、思いやりのようなものをもって考えることができるようになると思います。ここに2年生の段階で気付けたのはとても大きなことです。
 僕は今回の実習に参加して本当に良い経験ができました。後輩にも、「参加すれば絶対に身に付くものがあるよ」と薦めたいですね。