彩の国連携力育成プロジェクト [サイピー]

彩の国連携力育成プロジェクト [サイピー]

密着取材!!学生は連携教育で何を学ぶのか?(その3)

価値観の交差からアイディアは生まれる

 「では、どんな支援ができるのか、それぞれの専門性を活かして考えてみましょう」

 聞き取りを終えた6人に、朝から彼らの実習を見守っていた「プルミエール」のファシリテーター・原嶋創が声をかけた。原嶋は同施設の理学療法士。この施設は早くから埼玉県立大学のIPW実習に協力しており、原嶋は多くの学生と接してきた。

 利用者本人の希望は在宅への復帰。しかも、今まで通りの自立した生活だ。「1人暮らしを望んでいる利用者の気持ちに応えたい」と考える社会福祉学科の押谷に対し、転倒のリスクを懸念する看護学科の小寺。医学部の金田は「100%今まで通りの生活、というのは無理かもしれない。でも、それにできるだけ近づけるのが医療・福祉の役割だと思う」と述べた。

【活発なディスカッションから、支援策のアイディアがどんどん湧き出てくる】

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 利用者の自宅の縁側も、独居ともなれば落下のリスクを伴う。リスクを軽減するには、スロープをつけるか、無理であれば一部改築して縁側をなくす方法もある。しかし、押谷は「危険だから、という理由だけでなくすのは…」と抵抗した。村上も、建築の立場から「高齢者にとって、縁側は“段差”じゃない。椅子のようなもの」という。真剣にディスカッションすればするほど、職種によって異なるまなざしや価値観が交差し、ぶつかりあった。

 しかし、その摩擦はアイディアを生み出す力にもなった。千田はこれを振り返って「他の職種の意見に触発されて自分の意見がまとまった」と話す。

 約3時間、休むことなくディスカッションは続けられた。自分で栄養管理をするための意識づけ、薬の飲み忘れを防ぐ工夫、万一の緊急事態を周囲に知らせる工夫、火事防止のためIH調理器に交換する…利用者の独居生活を安全なものにするためのアイディアは、ホワイトボードいっぱいになった。

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「1つの職種だけでは、パーフェクトな仕事はできない」

 施設の協力のもとに、丸一日行なわれた実習は、学生たちの支援プラン発表によって終了した。だが、そのプランの良し悪しは、評価されることはない。この実習の本質は、プランニングの成果にあるのではなく、その過程であるチームづくりにあるからだ。原嶋は語る。

 「IPW実習を受け入れた当初は、私も優れたプランを提案できるのがよいチームだと考えていました。しかし、回を重ねていくうちに違うと気づいたのです。個々の力が発揮されたよいチームが形成できると、1つの課題をやり終えた感動が生まれます。社会に出てからも、この感動を求めるようになる。それが大事なのです」

 また、保健医療福祉の現場には、科学だけでは解明したり、対処できない現実もある。未知の体験と出会うたびに感じた驚きや謎、発見を自分がどう理解したかを省察することは、 “実践知”“暗黙知”と呼ばれ、専門職として成長する上での大きな糧になる。「リフレクション」と呼ばれる省察を体験することが、この実習の大きなねらいでもある。

 多職種連携を経験した学生たちは、さまざまな感想を述べた。

 「他の職種と価値観の違いがあっても、答えは出せるということを学んだ」(押谷)、「看護だけでは解決できない問題も多くもどかしさも感じましたが、多職種がかかわればさまざまな面から支援できる」(小寺)。「栄養学を学んでいる自分にも、食事以外の情報を聞けたことがよかった」(千田)。「医師も他の職種がいるからこそ働けるのだと知った」(金田)、「チームへの参加の仕方は、職種だけでなく性格も影響すると思った」(村上)。「臨床検査技師の仕事を検査室以外に開拓できる可能性を感じた」(横山)。

 多職種連携の重要性を語る彼らの発言を聞いていたファシリテーターの原嶋が、最後にこう締めくくって実習は終了した。

 「君たちのうち、1人が欠けてもこのプランは作れなかった。多職種連携の必要性はここにあるのです。これから社会に出ても、自分の職種だけでは限界があり、パーフェクトな仕事はできないのだということを知ってください」

【介護老人保健施設「プルミエール」・原嶋創理学療法士】

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医療・福祉施設も4大学間連携IPW実習を応援しています!

 多忙な業務のなか、4大学間連携事業の実習先として、ご協力いただいている施設の皆さまにお話をうかがいました。

今後の継続的な取り組みに期待
かさい医院/医療法人社団 誠信会専務理事 河西伸子さん

20130219-11「現場にいる私たちは、多職種連携の必要性を日々感じています。学生が社会に出てから他の職種の仕事を知ることがどれだけ大切か知ってほしい。この4大学間連携の取り組みを、今後もっと広めていただきたいと期待しています」

 

 

 

 

 

 

 

福祉施設の業務には多職種連携が欠かせません

社会福祉法人毛呂病院 光の家療育センター 副看護師長 御園夏枝さん

20130219-12「福祉施設である当センターの業務は、多職種の連携なくしてはできません。他の職種があっての自分達であること、その中でどう専門性を発揮するのかを学生のうちから学べる本プログラムに期待しています」

 

 

 

 

 

 

 

 

地域の高齢化を支える力に
医療法人社団弘人会 中田病院 リハビリテーション科科長 大塚幸永さん

20130219-13「IPW実習は学生さんを成長させます。4大学間連携事業でますます連携が広がったことはとても楽しみ。地域の高齢化は本当に進んでおり、高齢化を支えていくのには多職種の力が必要。若い世代がそれを担ってくれれば、よい社会を築く力になると思います」

 

 

 

 

 

 

斬新な実習プログラムが魅力
医療法人優和会 介護老人保健施設プルミエール 施設長 河野信博さん

20130227-3「これからのチーム医療を担う、4大学間連携IPW実習の斬新なプログラムに非常に魅力を感じています。特に今回、日本工業大学が参加されたことはとても有意義。建築専門家のチーム医療参加で、いずれ介護施設のハード面の改良・発展につながればと期待しています」