11月7日(土)の夕刻、4大学の学生の学習と交流の機会として、「『地域をケアする』ことについて考えよう!」と題するトークセッションを吉川団地内にある訪問介護事業所、福祉楽団地域ケアよしかわにて開催しました。4大学の学生を中心とした約30名の参加者がゲストスピーカーのお話しを伺うとともに意見や感想を交わしながら、懇親の時を過ごしました。
「地域をケアする」とは、地域の方々の暮らしをみつめ、困難に気づき、支えようとする営みを表現するために用いた言葉です。団地の1階に地域に開かれた居場所を提供しながら「地域をケアする」活動をしている福祉楽団地域ケアよしかわと、幸手団地にあるコミュニティカフェ、元気スタンド・ぷリズムの実践の当事者をゲストスピーカーとしてお招きして、活動の経緯や現状についてお話しいただきました。
地域ケアよしかわについては管理者でありスタッフである福祉楽団の古畑佑奈さん(社会福祉士・精神保健福祉士)と、設計を担当した日本工業大学の金野千恵さん(建築家、生活環境デザイン学科・教員)からお話しいただきました。金野さんはケアという営みに対する建築家としての解釈を示した上で、いつでも誰もが自由に使える場所にするという福祉楽団の方針に、設計を通じていかに応えたかを具体的に語ってくださいました。古畑さんは地域ケアよしかわの運営理念や、開設から1年半たった今にいたるまで、その場所で展開された取り組みや出来事についてお話しくださいました。
間口いっぱいに設けられた開口や窓辺に設けられたベンチ、運営者の態度などによって開かれた居場所がうみだされ、地域の方々の多様な活動が繰り広げられてきた楽しい情景が、写真とともに示されました。また、当初の予想と裏腹に放課後の小学生が活発に出入りする場となり、そのことを契機にスタートした遊びや学びや食の支援活動がボランティアの方々によって担われつつある現状が報告されました。地域ケアよしかわが地域と支え・支えられる関係を築きつつあることが窺われました。
この会の開催中も地域の方々が様子を見にきたり、子どもたちが出入りする姿がみられました。参加学生はその場所に身をおきながら、地域ケアよしかわの空間の力と地域に根ざした活動の価値を実感したに違いありません。
地域ケアよしかわのお話の後、10月から友人と共同でさいたま子ども食堂の活動を始められた獨協大学経済学部4年の村瀬彩萌さんにも活動報告をしていただきました。子どもの食の支援という点で関連することから4大学の枠を超えてご参加いただきました。学生という立場でも、人の暮らしのニーズを捉え行動する姿は、参加学生によい刺激を与えたことと思われます。
続いて、元気スタンド・ぷリズムについて代表の小泉圭司さんからお話しいただきました。高齢者が気軽に立ち寄れる居場所が必要との思いからコミュニティカフェの先駆けといえる元気スタンド・ぷリズムを設立した経緯にはじまり、「押しつけない介護」をコンセプトとした7年間にわたる取り組みの全体像をお話しいただきました。取り組みの内容は「生きがいサポート」「生活サポート」「コミュニティサポート」と分類されつつ、極めて多岐にわたるものでした。さらに地域の方々と医療・福祉のサービスや、地域の魅力を高めようとする様々な団体による活動を結びつける活動も精力的に行われています。参加学生はその熱意とアイディアの豊かさに圧倒されている様子でした。
医療・福祉の専門職以外の方がお仕事の中で、医療・福祉の制度やサービスではカバーできない生活課題に応えようと奮闘されている。その実践と態度から学ぶものは大きかったと想像されます。
お話を伺った後は、参加者有志がつくったサンドイッチとシチューを食べながら、グループで感想や意見を交わしました。その後、各グループの代表が話し合った内容の発表とゲストスピーカーへの質問を行いました。各自の専門に引き寄せた多様な視点からの感想や質問が投げかけられるとともに、今まで触れることの無かった他分野の視点との出会いについて驚きや喜びが語られました。グループディスカッションの後も、参加学生が思い思いの場所で、楽しそうに語り合う姿がみられました。
参加学生から寄せられた「トークセッションについての感想」と「企画全体についての感想」を掲載しましたのでご参照ください。
1.トークセッションについての感想
- 地域に開かれた場所として、事業所があることに驚きました。社会福祉法人の地域貢献として、これからこのような事業所が増えると良いと感じました。誰もが集まれる場を市民として何かできないか、考えたいし、実行したいと思います。(看護学科・1年)
- 建築についてなど普段の授業では学ぶことのできないことや、学校で学ぶだけでは気付くことができない実際の地域ケアの様子について知ることができて、楽しかったです。(社会福祉子ども学科・1年)
- 話し合う時間がもう少し欲しかった。(作業療法学科・4年)
- 医学生として普段関わることのできない地域での福祉活動について、実際に触れ、学ぶことができたので、大変ためになった。将来の“地域”での生活環境を変えていく力になるのではないかと感じた。(医学科・5年)
- すごく良かったです!!(薬学科・5年)
- 地域をケアすると一言で言っても奥が深く、可能性に満ちているなと感じました。自分の考えや想いをもっと発信していきたいと思います。(医療栄養学科・4年)
- 普段、授業で聴いている単語などがたくさんあって、すごく介護やケアを身近なものに感じました。地域の人々に常日頃から目を向けることへの大切さを改めて感じました。(医療栄養学科・3年)
- 今までに福祉についての話をしっかり聴く機会が少なかったので、実際に活動している方に、運営している上での様々な情報や意見を聞くことができて、大変良い勉強になりました。(生活環境デザイン学科・1年)
- 今回のお話を聴いて、意図していたことの幅をこえて、子どもやスーツを着た方、高齢者の方が同じ空間を共有しているという、やってみたから分かったことや建てている過程で興味を持って来た人がいたりなど多くの驚きがあって、面白かったです。あとは専門の違った人と話すことで、違った視点で物を見ることが出来てよかった。(生活環境デザイン学科・3年)
- 今日の地域ケアよしかわと元気スタンドぷリズムのお話をお聴きして、現在の団地の状況や地域の連携など、様々な業種の学生からのお話など、自分の学んでいることとは関係のない学部の人と話すということで新しい考えが増えた。(生活環境デザイン学科・3年)
- 今後やろうとしている研究、卒業設計の良いヒントをいただけました。自分が持っている知識だけでは補えきれない部分が出てきていて、詰まっているときにこのような機会に巡り合えてラッキーだなと思います。新しい事業を考えることが出来たならば、ワークショップなどを開き、意見交換をしたいと思います。(生活環境デザイン学科・4年)
- ケアということを各方面、職種の方がどう考えてきてそれに対してどうアクションしているのかをトークセッションの場を通して自分も考え、学ぶ機会になったのでよかったです。(生活環境デザイン学科・4年)
- 日本工業大学建築学科2年の現段階では、他大学との交流も福祉について考える機会もなかなかありません。今回、福祉楽団さんの地域ケアについて、幸手団地のコミュニティ喫茶「元気スタンドぷリズム」の事業についてお聞かせいただいて、とても勉強になりました。(建築学科・2年)
2.企画全体についての感想
- 多分野の学生と話すことで、新たな気付きが生まれました。今後もぜひこのような機会を提供してほしいと思いました。(看護学科・1年)
- 今日はとても良い経験になりました。ありがとうございました。(社会福祉子ども学科・1年)
- またこのような企画があれば、参加してみたいです。(薬学科・5年)
- 普段話す機会がなかなかない学生とお話ができて、自分にはなかった視点に気付くことができ、とても良い経験になりました。(医療栄養学科・3年)
- 他の大学との交流で自分が知らない知識、情報を聴くことができたし、多くの意見などを頂けたので、良い機会になりました。(生活環境デザイン学科・1年)
- チームになって話し合うことや同時に問題について話し合うということは、今までにないことだなと思いました。(生活環境デザイン学科・3年)
- 他大学交流会という企画にはじめて参加いたしました。まず、自分の中の視点以外に他大学他学科の視点で物事を見通すと変わった意見が出たり、お互いが知り得なかった知識が生まれるので、このような事業は今後も増やしていった方がいいと思いました。(生活環境デザイン学科・4年)
- 関心を持つことは大切だなと感じました。また、改めて多職種とのコミュニケーションは大事だなと感じました。(生活環境デザイン学科・4年)