「ヒューマンケア論」は人と向き合う態度、自身とケアの関わりなどについて学び・考える科目であり、彩の国連携力育成プロジェクトによるIPE(専門職連携教育)の基礎と位置付けられている。各大学の学生がヒューマンケアに対する理解を共有できるよう、4大学協働でDVD教材を制作し、活用を進めている。同時に日本工業大学では、工学部で建築分野を学ぶ学生に対する「ヒューマンケア論」のあり方を検討するため、平成26年度より生活環境デザイン学科の学生を対象に「ヒューマンケアと生活環境」をテーマとするゲスト講師による特別講義も実施している。
平成27年度は、12月10日(木)に霞ヶ関南病院の院長・伊藤功先生、12月17日(木)に非営利活動法人ドットファイブトーキョー代表理事・原口悠さんにご講義いただいた。
伊藤功先生はリハビリテーション病院の院長として、医療の目的が病気を治すことから、その人らしく生きることの支援に変わりつつあること、人の生活の支援、あるいは人の生活そのものが多様な背景から成り立っていること、そのような個々人の暮らしを支える上では空間のあり方も重要だということを、具体的なデータや事例を通じて説得力を持ってお話しくださった。さらに国内外の医療施設、福祉施設の先進事例をご紹介くださり、人のケアに建築分野が果たす役割や可能性を多くの学生が理解し、感銘を受けていた。
原口悠さんの率いるドットファイブトーキョーは同じ地域に暮らしながら断然されているオフィスワーカー・学生などとケアを必要とする人の新しい交流をうみだす活動を展開されている。その取り組みの紹介を通じて、ケアされる立場の人を「患者」「利用者」という限定的な側面から固定的に捉えるのではなく、楽しみや喜びをともにできる一個人として、自然に向き合う態度へのアプローチを提示してくださった。その他にもドットファイブトーキョーによる革新的な取り組みの数々に触れ、学生は、専門家になる以前にまず人として人や社会とどのように向き合うべきかについて有益な示唆を得ることができた。